2006/12/24

図式化できる子ども!  (速脳通信Vol. 2-2)

お子さんが図を描いて考えることができるようにするためには、いくつかの準備・訓練が必要になります。

a) 直線や曲線をうまく引くことが出来る

() 紙と鉛筆を使って、読み書きすることができる

(c) 問題そのものに関心を持つ。



(a) 線を引く訓練

意外に思われるかも知れませんが、中学生になっても直線をうまく引けないお子さんは、少なからずいるのです。そういうお子さんは、当然の事ながら、図を描こうとはしません。怠けているというよりも、すでにもう図が描けなくなっているのです。

小学校の中学年くらいのうちに、線を引けるように指導しておかなければいけないのです。うまい絵を描く必要は全然ありません。普通の直線で良いのです。最初は定規を用いて丁寧に直線を引くことから始めます。中学生くらいまでには、定規なしに、さっさっと直線を引いて、図を描ける用になっている必要があります。

() 紙の上で考える訓練――暗算学習からの脱皮

数学を学ぶ本当の目的は、図や数式を読みとったり、物事を図式化し・数式化して考える能力の養成にあります。それを数学的リテラシーとも呼ぶのですが、要するに、紙と鉛筆を用いて「読み書き」し、「思考」し「表現」する技術が求められているのです。

しかし、図や文字・数式を「読み書き」する技術の習得は、それほど容易なことではありません。おそらく、相模原の公立中学生のうち、せいぜい10%くらいしか、この技術を習得できていないでしょう。

暗算が得意な小学生のお子さんの場合、実は赤信号が灯っているのです。というのは、暗算大好きのお子さんは、頭の中で計算するのが算数のお勉強だと勘違いしてしまう傾向があるからです。小学校高学年以降の文章題や本物の数学は、かなり複雑です。暗算的手法では絶対に対応できなくなってしまうのです。

個々のお子さんによって年齢的には多少前後しますが、小学校中学年から高学年にかけてが、きわめて大事な移行期となります。この時期には、しっかりと図を描き、式を立ててみる訓練に移らなければなりません。ですから、本当の算数の指導者は、解答に至るまでのプロセス、つまり図式化と数式化に指導の重点を置いているはずです。答があっていたら○をつけてあげるのではなく、図や式がよく書けていたら、その箇所にも○をつけるのです。きちんと問題を理解した上出した正答と、適当に足したり割ったりして、たまたま当たった正当とでは、その意味が全く違うのです。

以上のような理由があるため、小学校高学年になっても○×式算数指導に委ねてしまうと、中学以降の数学がきわめて厳しいのです。

(c) 問題に興味を持つことーー子供を点取り虫にさせないで

算数・数学が得意になるための最大の方法論は、数学的問題に興味を持たせることです。この点について今回は詳述する余地はありませんので、わたしたちがぜひこれだけはお伝えしなければ!というメッセージだけを一つだけ述べておきます。それは、子供を点取り虫にしてはいけないということです。点取り虫の子とは、好奇心を失ってしまったお子さんのことです。解答欄がマルで得点がもらえたらそれで良い、というお子さんのことです。

親御さんの中には、ご自分のお子さんを、より偏差値の高い私立中学に合格させたいと懸命になっている方もいることでしょう。しかし、お子さんのテストの点数に一喜一憂するような態度で接することだけは、絶対に避けてください。極論をいえば、テストの点数などはどうでも良いことなのです。より偏差値の高い私立中高に合格することも、それほど大事なことではないのです。

算数や国語の「読み書き」の基本さえしっかりと身につけておけば、中学・高校以降、おのずと学力がぐんぐん伸びていくものです。基礎力のあるお子さんならば、小学校の段階でなんらかの目標に達してないとしても、たいして気にする必要はありません。しかし、無気力で好奇心を失点取り虫に育ってしまうと、やり直しも難しいものです。速脳学習教室からの心よりのお願いです。

算数のできる子ー文章題篇 (速脳通信 Vol. 2-1)

計算力がある程度以上できるのに、文章問題は解けないというお子さんも非常に多いのが現実です。その原因は次の二つです。

  1. 問題を図式化・数式化できない。
  2. 問題を解く過程に興味を持てない。

逆にいえば、この二つを克服できれば、算数や数学の文章問題は解けるようになるのです。

図式化の重要性

図式化について少し詳しく説明します。大抵のお子さんは文章問題を読むとき、頭を下げてただひたすらじっとしています。本人は考えているつもりなのかも知れませんが、全く何も考えてはいません。

問題を解くためには、まずは文章を図式化し、さらに数式化し、そのうえで答をださなければならないのです。算数や数学の問題は、まずは図式化する必要があるのです。図式化さえできれば、複雑な問題も、単純になり理解しやすくなります。図式化できれば、問題は半分以上解けたといっても良いのです。

次の小学校4年生向けの問題を見てください。

50枚の折り紙を、先生には80枚、生徒15人には11枚ずつ配ると何枚残りますか。

この問題の答は5枚なのですが、この数字があっているかどうかは、あまり大事なことではありません。重要なことは、問題文を図式化できるのか数式化できるのかどうかです。

先生80枚

生徒

11枚

11

11

11

11

11

11

11

11

11

11

11

11

11

   11

全部で250枚の折り紙


(問題文の図式化がポイント!)
  250-(80+11×15)  (<==11×15=165は必ず筆算すること)
=250-(80+165)   (”=”の意味を理解する
=250-245    (暗算厳禁!
=5         

答 5枚   (<==この部分は、それほど重要ではない)。

図式化のためには、間違いを恐れず、まずは何か描いてみなければいけません。これでダメならあれ、あれでダメならそれというように、いろいろな図を試行錯誤しながら描いてみることが大切です。ところが、お子さんの多くにとって、図を描く作業を「始める」ことすらも、なかなか難しいようです。ましてや、様々な図を試行錯誤しながら描いてみるお子さんは、ごく少数だけなのです。

それでは、どうしたら図を描けるようになるのでしょうか。あるいは、どうしたら図を描いて考えることができるような、算数的・数学的頭脳を開発できるのでしょうか。(つづく)


算数のできる子どもー計算篇(速脳通信 Vol. 0&1)

皆 様こんにちは。私どもは、相南1丁目で小さな学習塾(速脳学習教室)を始めて今年で5年目になります。かねてから作りたいと思っていた教育通信を発行する事になりまし た。お子様の教育に関するウソとホントを、客観的で公平的な立場からにわかりやすく解説していきます。どうぞよろしくお願い致します。

最初の2回は、「算数のできる子どもにする方法」について、計算篇と文章題篇に分けて説明してみることにします。

* 「算数」とは?
算 数って計算して正しい答えを求める勉強でしょ?いいえ、違います。算数とは複雑な問題を整理し解いていく為の技術です。正しい答えは考え方が正しければ自 ずとついてくるもの。あくせく追い求める必要なんかないのです。むしろ、追えば追うほど逃げるもの、と考えてよいと思います。

算数力をつ けるためには大きな柱が二つあります。一つは「計算力」、もう一つは「問題を数式や図に表す能力」です。今回は一つ目の柱「計算力」について取り上げま す。単に計算力といっても実は奧が深いのです。本物の計算力を身につけつけるためには「数の概念」がきちっと形成されていなければなりません。

問 6.3は0.1を何個集めた数ですか。
問 13mm+2cmは何mmですか。
問 0.8平方メートルは何平方センチメートルですか。

上記のような問題は、多くのお子さんにとってはかなり難しいようです。その理由は、数の概念がしっかりと形成され、定着していないからです。


* 「数の概念」とは?
「数の概念」とは、1が10個集まって10になり、 0.1が10個集まって1になり、1000が10個集まると10000になるというような「数のしくみ」を理解する事です。多くの子どもにとってこの概念は意外と難しい事なのです。一見計算力に問題がないように見えても、数の概念が未熟な場合が多々あります。


よくある落とし穴

* 「プリント式○×学習」で安心していませんか?

プリント式○×学習や百マス計算には、実は落とし穴があります。数の概念がしっかりと形成されているお子さんならば、ある段階までは有効な学習方法の一つでしょう。しかし、多くのお子さんは残念ながら、数の概念形成が未熟なまま、ただひたすら計算しているのです。これでは本物の算数力養成にはほど遠いのです。

*正答ばかりを求めていませんか?
算数は思考する道具なのですから、答えが合っているかどうかよりも、算数流の思考する技術が身に付いているかどうかの方がずっと重要な事なのです。しかし、プリント式学習では答えが合っていれば○、間違っていれば×で終わってしまいます。このような指導の下では、思考する技術は身に付きません。

*暗算が得意だと喜んでいませんか?
暗算大好きっ子は赤信号だと思って間違いありません。中学以降の数学には対応できないでしょう。次回、暗算の弊害についてもう少し説明致します。


数の概念を形成するには?

数の概念形成に最も重要な時期は、幼稚園年中以降から小学校低学年くらいの間です。この時期は、現物でも絵でも良いですから、とにかく具体的な物をしっかりと数える体験が最も重要です。「うちの子は100まで数が数えられるの」と嬉しそうに自慢している親御さんがたまにいらっしゃいます。しかし、それは意味も分からず数を暗記しているだけなのです。物の数を数えて理解するという事とは、全く別の事なのです。

できれば10までの数をたくさん数え、「数の足し算」や「数の分離」といった体験を遊びに取り入れるとよいでしょう。例えば、りんごのおもちゃを10個用意して数える。1個のりんごと1個のりんご、合わせていくつ?とクイズを出す。10個になる組み合わせをいろいろと考えてみる。こういった事を楽しみながらやるのがよいと思います。このとき、お勉強的にやってしまうと、逆効果ですから気を付けて下さい。

もし数の概念が形成されないまま、小学校の中高学年になったり中学生になってしまったら、まずは、小学校低学年の計算練習から復習してみてください。ここで重ね重ね注意して頂きたいのは、丸暗記方式にしてはならないことです。丸暗記は丸呑み込みです。そうなると、子供は数の概念を理解しないのに、正答を暗記してしまうのです

数は裏切りません。こちらが熱意をもって適切な練習すれば、必ず成果が上がります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回以降の予告

次回は、算数(と数学)をマスターするために不可欠なもう一つの柱、紙と鉛筆を使って考え、問題を図式化・数式化する能力について説明します。

この能力は、9歳から14歳の間くらいに、ぜひとも身につけてもらいたいものです。さもなければ、中学
以降の数学の勉強を続けていくことはできません。また、社会人になっても単純作業しかできないようになってしまうでしょう。かなり多くの生徒さんが躓いているのが現状ですが、できるだけ多数がこの能力を身につけてもらいたい、そう願って私たちは日々努力しているのです。どうぞ、よろしくおつきあいお願いしたします。

なお、No.3以後は、下記のようなテーマを取り扱う予定です。
  • 子供英語のウソ・ホントー早期英語の是非?
  • 私立中学に我が子を受験させるべきか?
  • 読書感想文の宿題はどうしよう?
  • 読み聞かせは何歳までやったらいいの?
  • お絵描きと図画工作の意外な効能。
これからも、どうぞよろしくお願いします。