二人がほとんどまったく同じ技法を述べているのが、実は文章作成の技術です。早川の本が後から出版されていますが、別に松永から文章作成法の技術を盗んだのではないだろう。むしろ、お互いに知らぬ間に、川喜田二郎先生のKJ法の技術をそのまま採用しているのです。早川も松永も独創性はなかったといえばそれまでですが、KJ法を知らず知らずに受け継いでいるという意味では、正しい真っ当な指導法だとも言えるでしょう。(もっと松永の場合は、自分がこの技法を発見したかのように吹聴する傾向があるので、少々問題があると言えないわけではない)。
まず早川の方から見ていきましょう。文章の書き方ついては78-80ページのたった3ページですが、ポイントをついています。
① メモ用紙(裏に糊がついている付箋が良い)を何枚も用意しておく。
② テーマについて心に浮かんだこと一つずつ1枚のメモに書きます。
③ そのメモを組み合わせて文書を作ります。
④ メモの組み合わせによって、少しずつ異なる文章になります。
例としては、
メモ1 「僕は、いつも7時に起きます」
メモ2 「ドラえもんの声で、お早うといいます」
メモ3 「ドラえもんの目覚し時計で起きます」
メモ4 [ドラえもんの声を時々うるさく思います」
メモ5 「時計は、4月にお父さんに買ってもらった」
↓
僕は、毎朝7時に起きます。4月にお父さんに買って貰ったドラえもんの目覚し時計で目が覚めます。その時計は、7時になるとドラえもんの声で「お早う」といいます。僕は、いつも気持ちよく生きられるわけではなく、ドラマの声もうるさく思うときもあります。
僕は、毎朝ドラえもんの目覚し時計で起きます。その時計は、7時になるとドラえもんの声でお早うといいます。4月にお父さんに買ってもらいました。いつも気持ちよく起きられるけれど、ときどき、眠くてドラマの声がうるさいなあともことがあります。
他方松永は、自分のやり方に「メモつなぎ術」だとか、「抽象構成作文法」と名付けています。(32-38頁)。松永自身は画期的な作文法と書いていますが、要はKJ法です。こんなふうに書いています。感想文を書きなさいとか、意見を述べなさいといわれたときにいきなり文章を作成するのではなく、「この質問に答えるには最低どんな言葉を使う必要があるかを考えさせ、それをメモの形に出させて、さらにそれをつなぎさえすれば、誰でも文章化することができるのです」(36頁)。なおこのやり方について、2冊の本で詳しく解説しているのだそうです。書いてあることは基本的に同じなので、これ以上詳しくは書きません。
かくいう私は、川喜田二郎先生の著作を知ることにより、KJ法で高校生や小学生に作文を書かせたり、心理学の大学院生・助手たちと文章作成大会を試みたことがあります。シンプルかもしれないが、大変有意義な技術であると言えましょう。ただし、国語的な題材はかなり複雑ですから、KJ法の作業が必ずしも簡単だという訳ではありません。
KJ法については
中学受験 お母さんが教える国語 (地球の歩き方BOOKS)
早川 尚子
