川喜田二郎先生にはたくさん著作があるが、とりあえずは『発想法』『続発想法』(中公新書)をできるだけたくさんの人に読んでもらいたい。すでに40年前に書かれた本であるが、今なお新鮮である。これは国語教育などだけでなく、例えば、第三世界の農村開発だとか、民主的意思形成の方法論を考えるためにも大いにヒントになっており、要するに、知的探究の方法論の源泉みたいなものだからである。
ここでは簡単にKJ法の方法論と注意すべきところをのべてみる。
用意するものは、①筆記用具(色ペンなども用意する)、②クリップや輪ゴム、③名刺サイズのカード。あるいは現代的に言えばやや大型の付箋、④図解のための大きな紙、⑤文章を書くための用紙である。
まず最初にカードに思いついた言葉や文章を書く。この時、過度に抽象的な表現を用いない。また、一つのカードにたくさんの内容を盛り込まない。そして、できるだけたくさんのカードを作っていく。KJ法というのは本来はグループ作業なので、各人が意見を出し合うことになるが、一人でやることももちろん可能であろう。(したがって本来のKJ法では、さまざまな人々の意見を出し合う複雑な討論が反映されているものとなるはずである。ここでは、あくまでも簡略化したKJ法のべているにすぎない)。
次いで、そのカードをグループ編成する。つまり、この紙きれとこの紙きれはなんとなく親近感を覚えるとか、内容が似通っているとか、そういったカードを一つのグループにしていくのである。たとえば「食べ過ぎはよくない」と「寝坊してはよくない」というカードが似通っていると感じたならば、一つのグループにする。
それから、一つ一つのグループに一定見出しをつけていく。
ここまでの段階で、どうしてもどのチームにも入れにくいカードが出てきてしまうが、無理にどこかに収めるとはしない。そして、より重大なことは、最初に大きく分けようとはしてはいけないということである。たとえば最初に、「自然」だとか「文化」「心情」といった大見出しをつけてしまってはいけない。あくまでも一つ一つの具体的なカードから、だんだんと大きなグループ分けに持っていくのである。これは、具体的な観察から何かを発見していく、KJ法の最も重要なエッセンスであり、われわれを教条的な思考から解放するものである。もちろん作文の技術としても有益であろう。川喜田二郎『発想法』の77ページの写真をアップロードしておく。
今度は、これらのグループの諸関係を、矢印などを用いながら関連付けていく。つまり、図解化していくのである。これについても、川喜田二郎の図を参照してもらいたい。そしてその図を参照しながら、それを文章にしていくのである。
以上がKJ法のエッセンスである。早川や松永の作文の方法論は、カードから文章を作り上げるという箇所を取り入れたモノと考えて良い。
発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))

川喜田 二郎
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